間伐材の課題を地域の強みに変える湘南・箱根の挑戦
環境問題や持続可能な地域づくりへの関心が高まるなか、間伐材を使用した製品を目にする機会も増えてきました。しかし、その背景にある林業の課題や、間伐材が生まれるまでの経緯について知る機会はあまりありません。また、間伐材の認知度は高まっているものの依然として需要は少なく、利用率の低さが課題となっています。この記事では、間伐の重要性や間伐材が抱える課題、間伐材を地域の価値としていかす湘南・箱根地域の取り組みをご紹介します。
◎間伐材が生まれるまで
最近では間伐材を使用した製品も増えており、その存在も少しずつ知られるようになってきました。その一方で、間伐材は単に間引きされた木というイメージだけを持っている人も少なくありません。実は、間伐材が生まれるまでには、私たちの暮らしに欠かせない森林資源を守り、未来へとつなぐためのストーリーがあります。
日本の森林には、自然の力で育った天然林と、人の手で植えられた人工林があり、人工林が約4割を占めています。これは戦後、住宅や暮らしに必要な木材を安定して確保するため、全国各地でスギやヒノキなどが一斉に植樹されたことによるものです。天然林とは異なり、人の手で植えられた木々は、人の手で管理しなければ良質な木材に育てることができません。人工林では木々が成長するにつれて、次第に森林内が混み合ってきます。そのまま何もしなければ、森林は日光や水分、土の養分を奪い合う状態になり、風通しも悪く病気がちになります。それぞれの木に十分な養分が行き渡らなくなると、健全な森としての機能が失われ、木材の品質にも影響を及ぼします。そこで必要になるのが、間伐という作業です。
間伐とは、成長した人工林の木々の一部を計画的に伐採し、残された木が広い空間のなかで丈夫に育つよう整える作業のことです。間伐によって森のなかに光が差し込み、風が通りやすくなれば、木々は丈夫に成長します。また、地面まで日光が届くことで下草や小さな植物が育ち、土壌の状態が安定します。その結果、森林の雨水を蓄える力が高まり、土砂災害の防止や安定した水源の確保にもつながります。この間伐作業で伐採される木材が、間伐材です。つまり間伐材は、木材の品質を高め、その豊かな森林資源を守り続けていくなかで生まれる、重要な意味を持つ資源なのです。
◎森林の課題を解決する持続的な間伐材利用

森林を健全に育てるうえで欠かせない間伐ですが、全国的には思うように進んでいないのが現状です。必要性が理解されていても、現場ではさまざまな課題が重なっており、継続的な間伐作業を行うことが難しくなっています。間伐が滞る大きな要因は、林業従事者の減少と高齢化です。山林での作業は体力や専門技術が必要なうえ、急斜面での伐採作業や搬出作業には危険も伴います。担い手不足の課題もあり、十分な人員を確保できない地域も増えています。また、採算性の低さはとくに深刻な課題で、手間をかけて間伐を行ってもそれに見合った収益にはつながりにくいのが実情です。さらに、伐採した間伐材を山から搬出するためには、作業道の整備や重機の使用が必要で、運搬費や人件費など多くのコストが発生します。加えて、森林所有者の高齢化や所有者不明林の増加も大きな課題です。山林の境界がわかりにくくなっている地域では、森林整備への同意に時間がかかるため間伐が進みにくくなります。間伐は地域ごとにさまざまな課題を抱えており、間伐材を販売しても費用を回収しきれず赤字となるケースも少なくありません。このように間伐が滞る課題には、人手不足や収益性、所有者の不明瞭さなどの複数の要因が絡み合っています。森林を健全に保つために必要な作業であっても、人員の確保や経済的な持続性が伴わなければ、間伐を継続的に行うことが難しくなります。
間伐材の利用率の低さも課題のひとつです。間伐材はサイズや形状が一定ではないことから、大量生産や規格品への活用が難しく、流通量も限られているという課題があります。間伐材の認知度は徐々に上昇傾向にあるものの、利用率は依然として低く、継続的な間伐作業が滞る原因となっています。間伐の課題は単に木を伐採すれば解決できるわけではありません。近年では、間伐を行ったにも関わらずその場に放置する切り捨て間伐が増えており、大きな問題となっています。間伐材を山に放置すると作業の妨げになったり、土壌の安定に必要な下草の生育に影響を及ぼしたりする恐れがあります。間伐材を放置することで、森林を守るための間伐が、かえって森林に悪影響を与えることにもなりかねないのです。間伐材は森林を守るために生まれた木材だからこそ、適切にいかす必要があります。また、間伐材に対する誤った認識も、間伐材の利用を阻む理由のひとつです。間伐材は間引きされる木であることから、細くて弱く、低品質な木材といったマイナスの印象を抱く人も少なくありません。しかし間伐材は弱いから伐採されるのではなく、健康な森林だからこそ間伐を実施できるのです。間伐材が生まれる理由やその重要性を多くの人々が理解することで、間伐材の利用をめぐる課題は解決へと一歩近づきます。森林における課題は、一時的に間伐材の利用量を増やせば解決するというものではなく、持続性のある仕組みとして成り立たせることが大切です。
◎課題の多い間伐材が地域の強みとなる理由

課題の多い間伐材も、地域産業と結びつくことで新たな価値を生み出す資源へと変わります。地域に根付いた技術や文化と組み合わせることで活用の幅が広がり、森林保全や課題の解決につながります。間伐材が地域の強みとなりやすいのには、主に次のような理由があります。
〇伝統や独自の技術と融合できる
地域産業が間伐の課題を解決できる理由のひとつが、その土地ならではの伝統技術と融合しやすい点です。間伐材は地域で育った素材だからこそ、その土地に受け継がれてきた木工技術や伝統技法とあわせて独自のデザインやアイデアを生みやすいというメリットがあります。間伐材という素材の個性をいかしながら加工することで、既存の技術に新たな魅力を加え現代の暮らしに合った製品づくりが可能になります。伝統をベースに、間伐材という課題を抱えた素材を用いることで、古いものをそのまま受け継ぐのではなく、森林保全という新たな意味づけができます。その土地で育った本物の素材の活用により、その土地ならではの価値も育まれていきます。
〇分業の仕組みが生まれやすい
分業の仕組みがつくりやすいことも、間伐材の課題解決につながります。間伐材がひとつの製品になり人の手に渡るまでには、いくつもの工程があります。そのなかでも、木を伐採する林業従事者や、木材を扱いやすい形に整える製材所、加工や仕上げを担う職人の技術は欠かせません。加えて、素材の魅力を引き出すデザイナーや、人々に製品を届ける販売者も必要です。そのためひとつの間伐材製品をつくることが地域内のさまざまな事業者や職人の仕事につながり、横のつながりが生まれやすくなります。地域内に仕事が豊富に存在すれば、林業従事者や職人を目指す人が増え林業全体の活性化にもつながります。このような分業体制は間伐材の積極利用だけでなく、林業の根本的な課題を解決できる可能性を持っているといえます。ひとつの地域で多くの人々が関われる分業の仕組みは、間伐材の課題解決だけにとどまらず、雇用を生み出すという点でも大きな強みとなります。
〇暮らしになじむ製品に展開できる
間伐材は、サイズや形状が均一ではなく、大型の建築材料としては適していないことが課題です。その一方で、小物や日用品など、比較的小さな製品には活用しやすく、素材ごとの個性が魅力になりやすい特徴があります。そのため、間伐材はカッティングボードやトレー、インテリア雑貨など、日常生活を豊かにする製品として価値を生み出しやすい素材といえます。また、間伐材は素材自体にその地域の特色が出るため、単なるご当地商品ではなく本物の地域の魅力を伝えるお土産としても最適です。間伐材は使うことに意味がある素材であり、暮らしのなかで活用されることによって森林の大切さをより強く感じさせてくれます。森林資源を守るために生まれる間伐材は、素材自体に大きな価値を持っており、量産品には真似のできない製品づくりが可能になります。
◎間伐材で新たな地域の形をつくる湘南・箱根地域の挑戦

湘南・箱根エリアは、美しい自然と多彩な地域文化が育まれ、昔から人々を魅了し続けている地域です。豊かな箱根の森は、人工林が大きな割合を占めており、間伐作業が欠かせません。箱根の山と湘南の海が織り成す美しい景観は、あたりまえにそこに存在していると思われがちですが、実は林業に携わる人々の絶え間ない努力によって受け継がれてきたものです。その土地で培われた技術や経験を大切に受け継ぎ、地域内でいかし続けることで、間伐材は循環し、地域の人々や訪れる観光客にその価値が届けられます。それは単に、売れる商品をつくるための取り組みではありません。何のために間伐材を使うのか、間伐材で何を生み出し、何を伝えるのか、その問いかけを繰り返しながら、課題解決につなげる取り組みです。地域で間伐材の課題解決へのアクションを起こすことは、箱根の自然の豊かさの持続性につながります。間伐材の課題を地域の価値を生み出す力へと変えていく湘南・箱根地域の取り組みは、これからも力をいれていきます。
SHONAN HAKONE PROMOTIONSでは、間伐材の課題を箱根の新たな価値をつくる挑戦と捉えています。湘南・箱根地域にはさまざまな伝統や文化、そして豊かな自然があり、現在も多くの人々が観光に訪れます。それは先人の絶え間ない努力の賜物であり、現代を生きる私たちが責任を持って引き継ぎ、未来へと残していくべきだと考えています。私たちの想いや間伐材活用の取り組みについては以下の記事で詳しくご紹介しています。
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◎ まとめ
間伐材は使い道のない不要な木ではなく、健全な森林から生み出される価値ある資源です。間伐材に対する正しい認識と持続可能な利用の仕組みをつくることが、間伐の課題を解決する糸口となります。SHONAN HAKONE PROMOTIONSでは、湘南・箱根地域を中心に、間伐材で地域の魅力を新たに生み出し、美しい自然を未来へ残す取り組みを行っております。プロジェクトにご興味のある方は、サンプルをお渡しすることもできますので、お気軽にお問い合わせください。