日本の地域別間伐事情とは?湘南・箱根の持続性ある取り組み
間伐は、健全な人工林を維持していく上で欠かせない管理作業のひとつです。しかし、日本ではこの間伐が追いついていないのが現状です。世界と日本の間伐事情を比較してみると、日本の間伐が進みにくい理由が見えてきます。この記事では、日本と世界の間伐の違いや地域ごとの課題、森林を守るための間伐を継続して行う取り組みなどをご紹介します。
◎日本と世界の間伐事情の違い
日本は国土の約7割を森林が占める世界有数の森林大国で、そのなかでも人工的に植えられたスギやヒノキの割合が非常に高くなっています。これらを健全に育てるために欠かせないのが間伐という作業です。間伐とは、成長の途中で樹木の一部を計画的に伐採し、残った木が十分な光や養分を得て健全に育ちやすくする作業を指します。間伐は木々の成長を安定させるだけでなく、土壌の保水力や水の循環機能を高めることで、土砂災害の防止や生態系の保護といった多面的な役割を担う重要な森林管理の一環です。日本では、戦後の拡大造林によって同時期につくられた人工林が多く、現在はその多くが一斉に間伐期を迎えています。日本における林業は、木材の生産以外に国土保全や環境維持といった役割が大きく、間伐も森林整備としての意味合いが強いのが特徴です。その結果、採算性の確保が難しく、担い手不足や管理の遅れといった課題も顕著に表れやすくなります。
一方で、海外では林業そのものの位置づけが日本と大きく異なります。たとえば、北欧やドイツなどの森林先進国では、林業は再生可能な資源を活用する産業として確立されており、間伐もその一環として日常的に行われています。伐採後には植林が計画的に行われ、森林は区画ごとに長期的に管理されるため、植林時期や樹齢が分散しているのが特徴です。これにより伐採のタイミングも分散させやすく、安定した木材供給と持続的な森林経営が成り立っているのです。このように、海外では森林を使って育てる資源として循環させるのに対し、日本では守りながら維持していく資源として認識されてきた点が大きな違いです。植林時期の違いによる森林構造の差も、間伐のあり方や林業に大きな影響を与えています。
◎日本の地域ごとに異なる間伐の課題

日本で間伐が滞っている背景には、地域ごとの問題があります。日本の森林は一見すると同じように見えますが、実際には地形や気候、所有者の明確性、人口問題などは大きく異なり、それに伴い間伐の進み方もさまざまです。
〇中部山岳地帯(長野県・岐阜県など)
中部山岳地帯に位置する長野県や岐阜県は、3,000メートル級の日本アルプスが織り成す険しい地形と標高差が特徴です。これらの地域では、森林資源自体は豊富である一方、林業においては傾斜地での作業が多く、伐採した木の搬出経路の整備もじゅうぶんに行われず間伐作業が進みにくいという課題があります。作業効率が上がりにくく専用機械の導入や人件費などでコストも高くなりやすいため採算がとれず、そのうえ林業従事者の減少や高齢化が間伐の停滞に追い打ちをかけている状態です。一方で、伐採した木材の搬出経路の整備や、高性能林業機械の導入が進んでいる地域では、効率的な間伐を実現しつつあります。
〇多雨地域(紀伊半島・四国地方など)
紀伊半島や四国地方は、日本有数の多雨地域として知られており、その豊かな降水量が数々の上質な森林を育んできました。とくに三重県の尾鷲ヒノキや奈良県の吉野ヒノキ、和歌山県の紀州ヒノキは有名で、上質な木材の産地として林業の発展を支えてきました。これらの地域では雨量が多く、森林の成長が早い反面、適切な間伐が行われないと過密状態になりやすい特徴があります。また、豪雨による土砂災害リスクも高いため、間伐の重要性は非常に高い地域でもあります。古くから林業が盛んな地域ですが、近年では人手不足により管理が追いつかない森林も増えています。
〇豪雪地域(北海道・東北地方・北陸地方など)
北海道や東北地方や北陸地方などは、伐採した木を雪の上で滑らせて集めるなど、積雪をいかした森林管理が伝統的に行われてきました。しかし、近年では積雪量の多さや人手不足が林業に大きな影響を与えています。冬季は作業が制限されるため、年間を通じた間伐の計画が難しいことも作業を停滞させている一因です。しかし、積雪地での間伐の遅れは土壌の保水力や浸透能の低下を招きやすく、雪解け水の急激な流出や、雪崩などの災害リスクを高める要因となります。また、雪の重みで木が曲がってしまう雪害への対応も必要となり、間伐を含む管理作業が進みにくい状況です。とくに雪起こしと呼ばれる雪害対策は重労働を伴うため、担い手不足が懸念されています。
〇過疎化が進む地域(山陰地方・九州山間部など)
山陰地方や九州山間部、東北地方などでは、人口減少と高齢化の進行により、森林の管理体制そのものが課題です。島根県や宮崎県などでは、所有者が不明、あるいは所有者が管理できない森林が増加しており、間伐が行われないまま放置されるケースも少なくありません。所有者不明林の増加は過疎化や高齢化、私有林の多さが深く関係しており、日本各地で問題となっています。相続の際の登記手続きがされないまま世代交代を繰り返していることや、都市部への人口流出により森林所有者を把握するのが困難で、間伐作業が進みにくい状況です。こうした地域では、森林組合や自治体が主体となった管理権の集約化や、地域ぐるみでの森林管理の取り組みが進められています。
◎間伐不足が引き起こす日本の自然災害と環境問題

日本では間伐が行われないまま放置される森林が増えており、その影響は自然環境のみならず、私たちの暮らしのなかにも広がりを見せつつあります。とくに懸念されるのが、土砂災害のリスクの高まりです。間伐が行われていない森林では木々が過密状態となり根の張りが浅く、根自体も細くなりがちです。その結果、地盤をしっかりと支える機能が低下し、大雨の際に土砂災害が発生しやすくなります。日本はもともと降水量が多く、地形も急な地域が多いため、間伐不足は災害リスクをさらに高める要因となります。
また間伐が不十分な森林では、水を蓄える力も低下します。適切に間伐が行われている森林は、地表に光が届き下草が育つことで雨水をゆっくりと地中に浸透させられます。しかし、間伐が不足していると地表付近が暗くなり、下草の生育を阻害します。すると雨水が地中に浸透しにくくなり、土砂を含んだ大量の水が河川や海に流れ込みます。さらに間伐不足は、生物多様性の観点からも問題視されています。単一の樹種だけが密集した人工林では多様な植物が育ちにくく、それに伴って森に住む動物の生育環境が脅かされ、人里に降りてきて被害をもたらすなどの問題を引き起こします。
日本の豊かな自然環境を維持していくためには、間伐によって適度な光と空間を確保し、多様な生態系が共存できる環境の整備が大切です。これらの問題点は、近年注目されているSDGsの観点からも見過ごすことのできない課題です。SDGsは日本では持続可能な開発目標という意味で用いられ、気候変動や環境保護についての目標も掲げられています。そこでは限りある資源を大切にし、1人ひとりが行動し、考える姿勢をとる必要性を謳っています。日本において間伐を適切に行うことは、安全な暮らしや持続可能な資源の利用にもつながる取り組みであるといえます。
◎日本で間伐を継続する仕組みと湘南・箱根地域の活動事例

日本で間伐を滞りなく行うには、間伐を継続できる仕組みづくりが欠かせません。そのカギとなるのが間伐材という資源を、無駄なく活用する取り組みです。これまで日本では輸入材の普及により国産木材の利用が伸び悩み、間伐そのものが進みにくい状況にありました。しかし近年では、日本における木材利用率は2002年の18.8%を境に上昇し続けており、国産木材への関心が高まりつつあります。
その背景には、戦後に造成された人工林が本格的な伐採のタイミングを迎えていることに加え、公共建築物での木材利用促進や脱炭素社会の実現に向けた政策があります。間伐材が積極的に使われるようになれば、継続的な間伐の実施も可能になるでしょう。とはいえ、こうした流れがそのまま日本の林業活性化につながるとは限らないのも事実です。木材利用率が上昇しても、必ずしも収益が上がるわけではありません。間伐を担う人材不足や、森林と市場をつなぐ流通体制の課題も残されています。需要と供給のバランスが整いはじめた今だからこそ、それを持続的な仕組みへとつなげていく視点が必要です。
間伐材は地域経済の活性化につながる素材としても期待が寄せられています。間伐を通じて木材の加工や流通、利用までを地域内で循環させることができれば、新たな雇用や産業が生まれ日本各地で森林と人との関係が再構築されていきます。これは持続可能な資源利用や地域社会の発展といったSDGsの理念にもつながる考え方です。間伐が地域に価値をもたらす活動として認識されることが、継続的な森林管理の大きな支えとなります。
こうした考えの元、湘南・箱根エリアでは、地域と行政や企業が連携した森林再生の取り組みが進められています。都市と自然が近い距離にある湘南・箱根地域では、間伐による持続的な森林管理が暮らしや観光地としての質に直結します。そのため間伐材を地域資源として活用し、その背景や価値を伝える活動が盛んで、地域の人々にも浸透しています。さらに箱根では、間伐材だけでなく災害防止のために伐採された歴史ある木々や、施設の発展とともに歩んできた思い入れのある木々を、地域の魅力を伝えるオリジナル商品として再生するといった活動も行われています。観光地である湘南・箱根の強みをいかした取り組みが人々の関心を高め、森林保護への意識を育てる好循環が生まれています。
◎ まとめ
間伐は日本の森林を健全に保つために欠かせない作業ですが、十分に行われているとはいえないのが現状です。環境や災害への影響、そして地域ごとの現場の課題を踏まえると、間伐を継続していくための有効な仕組みづくりが欠かせません。SHONAN HAKONE PROMOTIONSでは箱根・湘南地域を中心に間伐材の活用を通して地域の魅力や歴史背景を伝え、持続的な森林保護活動に還元する取り組みを行っております。プロジェクトにご興味のある方は、お気軽にお問い合わせください。